まおゆう

最近全く鬱々とやる気なしで日々時がすぎるのに怯えているばかりです。
まあそういう時は何かラノベとかweb小説でも読むに限るということで。
魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」、通称まおゆうを読みました。その感想。
この作品をどう捉えたらいいのか、ちょっと難しいです。いろんな要素を含んでいて、かつ個別の要素だけ見ればそれなりの欠点を含んでいると思うのです。ラブコメとしては同じところをグルグル回り過ぎだし、ファンタジーとしては世界設定が粗すぎるし、ファンタジー戦記としては”敵”を書いてない時点で評価以前。経済ものとしては概念ぶっこんだだけで駆け引きもなにもあったもんじゃないです。新ジャンルって表現法で、即興で書いているというのも考慮すれば素晴らしい品質なんでしょうが、でも即興芸術というのは偶然によって生まれる煌きが売りなわけで、決して早いこと自体に意味があるわけじゃない。この作品は非常にロジカルな作りになっていて、そういう部分での評価はできない。なんというか、この作品はバラバラに分解してしまうと価値を失ってしまうような感じです。
そうだなー、この作品は言うならば、”程良く”整えられた、勧善懲悪な和製RPG風、長編完結ファンタジー、ってとこになるんでしょう。この作品の評価できる点というのは、つまるところこれそのもの、この説明を満足することが出来るだけの一定の質と量を持っている作品である、ということにあるんじゃないかなーと思います。破綻もなく投げ出すことなく長編ファンタジーを書ききることは中々出来ることじゃなく、それにより生まれた質量は確かな存在感を持っていて、それ自体に価値があるということです。
後はこの作品、普通の小説として捉えるよりは、ゲームのシナリオとして捉えた方がより面白い解釈ができるかなー。この作品にはプレイヤーが一人しかいないんです。負けることを前提とされた作られた敵しかいない、主人公陣営しかプレイしてない、一人用のRPG。それがしっくり来る。主人公陣営は皆結局同じ方向を向いていて、敵は欲望にのみによって動いているか、あるいは世界のシステムそのものなわけでして。まあそんなものを小説として捉えるなら、安易と言わざるをえないんですが、一人用のゲームのシナリオとして捉えるならメタなネタ、システムに至るまで非常に面白いギミックが散りばめられていてとても豊かな作品だと言えるんですよね。
中々考えさせられる作品でした。