これは

感想を書かざるをえない。空色パンデミックについて。
ここ数年で一番のライトノベルだと思います。いやーすごい。
あらすじは別のところにまかせるとして。
セカイ系邪気眼中二病的なものを現代社会に取り込んで、そういう”イタイモノ”をを明るく魅力的に描け、それでいてシンプルな設定。「すこし、ふしぎ」であるがゆえに、SFの基本的な思想である、現実に一滴だけ嘘を混ぜるというのもうまく実現しているし、現実との乖離感もほぼなく自然に感じられる。非常に優れた設定だと思います。みんな大好き中二病をここまでうまく料理できたのはいままでになかったんじゃないでしょうか。
キャラクターも魅力的。ヒロインの結衣は典型的なアクティブツンデレだけど嫌味がないし、妄想からの復帰後の恥ずかしがりようが可愛いし。しかしながら!なによりサブヒロインの青井が仕上がってるのです。男の娘と思わせてからのー!ツンデレだったり大胆だったりー!アンバランスでミステリアスな魅力満載です。正直萌える。サブキャラも皆いい味出してますしね。
文章もリーダビリティが高く、尚且つしっかり内容がある。一巻の戯曲だったり二巻のフォレスト・ガンプだったり小技も利いてる。中二設定もノリノリでやってる感じが出てて微笑ましいし。
ストーリー構成も夢オチと思わせてからの夢の中オチ(俺はそう解釈している。10月が春になってるのはやっぱり天地創造が起きてると言うことでいいんじゃないか。景と結衣が、『景が空想病患者じゃない』という空想を同時にしたということ。二巻の最後でも仄めかしてあるし。そう考えると二巻の青井のデートがより一層味わい深い)でなかなか見られない凝った終わり方。ちょっとディックっぽくて好き。
読んでいて強く感じるのはハルヒを強く意識した作りになっているということ。二巻の新キャラなんてわざとらしいほどです。しかしながらハルヒに影響を受けたと言うよりは、俺ならハルヒをこうやる、という感じでしょうか。設定やストーリー構成は好みもあるでしょうがハルヒに全く引けをとりません。それだけ出来がいい。ハルヒの次になりうるだけのポテンシャルがあると言い切れますね!
これどこに持ってっても大賞とれただろうに、そしてもっとメジャーレーベル(はっきり言ってしまえば電撃)で出せばもっと売れるのにとか思っちゃうのは俺だけでしょうか。いや売れてないのかどうかは知らないっすけど。そのうち認知されれば、とは思いますが。今後にいろいろ期待ができる作品です!